kakujiroのblog

日々のアウトプットとしての雑記帳。カテゴリが貯まればそのうちHPに移行するかも。

圏論復習その1

圏論まとめ作ると宣言してから1週間経ってしまった。。LaTeX記法をどうやってはてなブログで使えるか調べてたら億劫になって放置状態になってました。今日こそ書きますが、初めての数式込みの投稿なので内容は薄めです。(あとついでにマークダウン記法にも挑戦)

1.1 圏の定義、反圏

まずそもそもの圏論の意義ですが、思いつくのは以下の2つです:

1. 異なる数学的対象の同一視を厳密に行う

1つ目は本にもある内容ですが、数学では異なる2つの対象が似た挙動を示すことが多くあります。例えばベクトル空間の同型を例にとると、\mathbb{R} (1, 0)\mathbb{R} (0,1)\mathbb{R}^ 2x軸とy軸で別物ですが1次元のベクトル空間としては全く同じ挙動を示します。

上の例は「ベクトル空間内での」同一視ですが、圏論は「数学的対象としての」同一視を行います。ベクトル空間という数学的対象が集合という数学的対象と同じものかどうか、という具合で同一視するレベルが一段上がっている訳です。

特に未知の数学的対象のなす圏が実はベクトル空間の圏と同型でした、とわかったりすると基底の存在やジョルダン標準形の存在など一気にわかることが増えて嬉しい訳ですね。

2. 脳筋で数学的操作ができる

2つ目は、上述のことから圏論は個別の数学的実態には依存しないので一般論で結構な程度数学的操作ができてしまいます。いちいち具体的に集合の元を取ったりしなくて良いので複雑な議論を一気に吹っ飛ばせるメリットがあります。

以上のお気持ちを述べた上で圏の定義が以下になります:


定義圏(category)\mathcal{C}とは

  • 対象(object)X, Y, Z, \cdotsおよび
  • 射(morphism)f, g, h, \cdots

の集まりであって次を満たすものをいう:

  • 各射はdomainおよびcodomainという対象をもち、f \colon X \to Yのように表される
  • 各対象X恒等射(identity)1_X \colon X \to Xを持つ
  • f \colon X \to Y, g \colon Y \to Z, h \colon Z \to Wに対して
    • fのcodomainとgのdomainが一致している今のような状況では合成射g f \colon X \to Zが存在する
    • 恒等射との合成は何も変化しない:1_Y f = f, f 1_X = f
    • 射の合成は推移的:h(g f) = (h g)f \colon X \to W

例として集合の圏\mathrm{Set}やベクトル空間の圏\mathrm{Vect}_{\mathbb{R}}がありますが、他にも\mathbb{R}自身を次のようにして順序集合の圏と見ることができます:

  • 対象は実数
  • 射は実数s, tに対して s \le tなら s \to tの射が存在する

また、圏\mathcal{C}に対して射の向きを全て反対にした反圏(opposite category)\mathcal{C}^ {\mathrm{op}}も定義できます。つまり圏\mathcal{C}の射 f \colon X \to Yに対して反圏\mathcal{C}^ {\mathrm{op}}の射は f \colon Y \to Xと定めます。 なんでこんな概念をわざわざ導入するかは後々わかってきます。端的には圏論の命題を1つ証明するとその双対的な命題も同時に証明できてしまうのが嬉しいのですが、具体例を見ないと理解できないでしょう。(自分も最初理解に困った)

次回は圏の間の射である関手や、関手の間の射である自然変換を定義します。おしまい!